よくみえるってどういうこと?

あいかわらず誰の役にもたたないだろう日記

それぞれT

春樹クラブも後半、私のホスト回が終了した。

課題本については、前期の『遠い太鼓』でじゃっかんすべったため(「ないない!」とみんないってくれたけど、いや。ノルウェイ前の春樹のさだまらなさと大昔の世界状況が若者にうまく伝わらず、明らかに盛り上がりが…おもしろへの固執激しい身には痛恨の…)多少悩んだ。多少はね。でも。

春樹の小説は内省に走るので、メンバーの語りも深く重くなりがち。そこがクラブのすばらしい点とはいえ、前回同様危険をかえりみない「このへんで駄話回を…!」の野望止まらず、やっぱりエッセイだよな~と本棚の前をうろうろするうち『村上T』をみつけ、ピピピッと(読書会で選ばれるのは初だそう。へ~)。

一定の女性にしられる『あのときわたしが着ていた服』を私も当然好きなのだけれど、おしゃれに関心ないひとだって、なにかを思い出すとき、決意を胸に発つとき、「これだ」「これだった」と浮かぶ服があるのではないか。くわえて、Tシャツは誰もがいつか着る、自由と堕落と若さと昼寝と意思と旅と音楽と朝と夜中とお出かけと寝巻と、とにかくいろいろなものの象徴かつ断片。

本著は、氏の膨大なコレクションからテーマごとに2~3枚選ばれたTシャツ&短文をまとめたエッセイ集で、目に楽しく、趣味の広さ奥深さや粘着質ぶりなどが垣間みえる1冊だ。まとめの野村訓市インタビューも「(両者の)自由を愛しあちこちを旅した、若くないおとな」の余裕をただよわせ、全体にしゃれた仕上がり。

って四の五のいう必要ないか。私「が」読書会メンバーの「特別な1枚」をみたかったのだ。読んだあと、写メでもいい、現物を持参してくれたらもっとうれしい。あなたの、お気に入り、捨てられない、思い出の、作った、買った、Tシャツを教えていただけますか。あわせてエピソードをご披露くださいますと幸甚に存じます。

当日は広範囲に話題がはね、Tシャツみせあいタイムは短くなってしまったけれど、全員ブツを持ってきてくれて、やった~! と思った。くたっとしたTシャツが素敵な本屋で次々広げられる素敵な眺め。現物パワーはさすがだね。

選抜Tシャツと持ち主は確実につながっており、書店主は「名著の初版書影シリーズ」…そんなん作り続けるひと(メーカ―)がこの世には~って驚きと「なにしてもおしゃれなんだからも~う」が半々、ボディは霜降りが好きなのだけれど汗が気になるというバーテンダー氏は浮世絵とゲームキャラのグラフィックがクールなそれ、おしゃれな先輩に憧れて買った男子のマーク・ゴンザレス(最高)。現在屋号をとりケーキを焼く女性が選んだのが何年か働いていたSHOZOカフェのノベルティT、などなど。

嗚呼、人生哉。プラス、「ここにはダサいひとがいない」確信と安心感。

かくいう私は、あまり考えこまず、乙美の遠足で着用した古着Tをチョイスした。磯で運営のYさんに「いいっすね、FIRST GRADE! 我々だ、まさに」ってニコニコされたやつ。ばっちりあそこが「1年生」だったと、のち何度も思い返したやつ。

Tシャツ、わりと自分をみつめなおせちゃうので、ひまなときなど引き出しをあさってみたらおもしろいかも。友だちと自慢しあうの楽しいかも。

「手を動かす」回のよさも共有でき、ホスト的にも満足満足。