よくみえるってどういうこと?

あいかわらず誰の役にもたたないだろう日記

写真はイメージ、かもしれません

2/25(日)

2月最後の三連休最終日。日本ペンクラブ主催のシンポジウム「男らしさの彼岸」に参加してきた。

鼎談者は、桃山商事の清田隆之さん、作家の島田雅彦さん、男性学研究者の田中俊之さん。清田さん目当て(よもやまま話愛聴者)だったが、お三方とも著作をいくつか読み、悪い感情は持っていない状態である。

寡聞にして「日本ペンクラブ」の現況をしらなかったけれど(名称、意義、数年前初の女性会長として桐野夏生氏が就任、などはさすがに存じ上げておりましたが)いやはやなかなか「物議を醸している」団体なのね(だろうな…といまは)。

鼎談は激しくおもしろく、もっともっとききたかった。

格式高いアカデミックな雰囲気に負けず(根性あるな~と正直思った)のっけから清田さんが(「司会お上手ねホホホ」つって大御所女性に褒められてたのひそかにウケたけど)大スクリーンに「クソLINE」のスクショをアップ。

クソLINEとは。夜11時半以降「飲みませんか~(笑)」「うちいってもいいかなテヘ」みたいなことを絵文字つきで微妙~に冷たくできない男性(先輩の友人、上司の知人、取引先、なりゆきで紹介された男性など)から女性に届くあれ。「おつかれさまです。遅いんでまた!」「いやもうお風呂に入って寝ます(笑)」とか一応やさしく返すも引き下がらず「お風呂! 一緒に入りたいな~」「廊下でも寝れるで★」など目が腐るメッセージを連投されるやつ。

溜まったドラマをみようかな。読みかけの本もあった。いや、ビール飲んでとっとと寝るか! 的なウキウキは雲散霧消。失礼ないよう、しかし希望を持たせぬよう、言葉を選び、短い返事を送るむなしさ。モヤモヤ。虚無。

不毛なケアに私的時間を費やす苛立ちは当然として、嫌悪の根源は「なめられ」だ。興味・尊敬を1ミリも抱けない人間に安く見積もられ、ニヤニヤされる気持ち悪さ。対話の成立は望めないから笑ってかわすが、傷は思ったより深い。

男は女(弱者とみなした人間)に横柄な態度をとることができ、接待されるべきで(でなきゃキレてもよい)強い者は弱者の心情をおしはかる必要はなく、人権侵害も笑顔でゆるしてもらえる(はず)という謎の思い込み。

見事にかみあってないやりとりをみても、加害者(予備軍含)は「実害ないでしょ、かわいいもんじゃん」「最近ピリピリしててやだね~」くらいの反応なのではと想像するが、そこ! そこを! ニュアンス丸ごと、島田雅彦御大は秒で理解された。

「これはコミュニケーションではないよね」「きわめて維新的な…声が大きくてケンカの強いヤツが上位、それにくっついてれば勝てるってチンピラの思考」「近頃なら松本人志が典型だけど」…ぎゃ~2億点じゃないですか!

「有害な男性性」の話から、清田さんがお二人に「<弱い>立場の男性が、力をもつ男性を熱狂的に支持するのはなぜなんでしょう」とたずねると「生涯<競争>だからです。成績がいい、足が速い、モテる、おもしろい、勝てば官軍。成人以降はとくに社会的地位が重要視されて、現実はどうあれ強い誰かと同類と思うことでプライドを保つ。女性は<下>の生き物、意思と能力をもち同等の収入をえるなど我慢ならない。きつくて古いシステムは既得権益バリバリの老人が作ったもので、マッチョイズムやネオリベ的なところから弱者男性がはじかれてるのは少し考えればわかるんだけど、疑ったら敗者決定、修正もしたくない」「それを温存し煽るのが自民党や維新。短絡的かつ反知性に傾いてくれりゃ大歓迎ですよね」などなど。

島田氏は鈴木涼美さんや雨宮処凛さんと親しく、ご自身の発言や行動を日々省みられているそうで。年齢じゃない(松本世代)、やはり知性がものを…

こうした頭のよさ(&発言できる立場)こそ「きわめて維新的な」ひとたちが蛇蝎のごとく嫌い、敵視するものなのだろうが。危険分子だもんな。どっちがだよ。

非モテ男性の恨みがトップの男にいかず一般女性に向けられる」「振られた腹いせに相手を刺す」「ホームで無関係の女性にぶつかる」などの不可解、迷惑、恐ろしい事象にもばっちり応用できる読み解きに瞳孔が開く私だった。

「90年代生まれた<男らしさ>への疑問にようやく輪郭ができて、周知に至るのはさらに30年後かもしれない。けれど生きている間は問題を指摘し続けたい。多くのひとと話したい。同じ会社に長く勤めて結婚し子どもを育て出世することに絶対的な価値はなく、幸せとは限らない。型にもう無理がある」「弱さや無力をさらけ出して酒なしでおしゃべりができる仲って心地いいですよ、会社の人事情報とか興味ないし。若い世代ではすでに見限って自分の快楽へ舵をとるひとも多い。最上階のじいさんをうらやましいかってもねえ…」などの言葉が染みる。

(「脊髄反射」「論破」「自己責任」「フェミ叩き」などを毛嫌いしてたの、やつらのセンスと頭の悪さ以前に、ただ筋が通ってただけなのかも)

気づけるひとは変化に対応し新しい出会いやコミュニティに恵まれ、学んで楽しく、気づけないひとは権力にあぐらかいて害悪まき散らす状況を手放さない…への嘆きも大きいが、まずは「持たざる」一般男性に己の弱さを認め、同期や同僚やパパ友ではない「誰か」と新しい関係を築いてほしい。<男らしさ><男たるもの>の呪いから離れれば自分にもひとにもやさしい世界が待っている、とのこと。

そうでしょうとも。自力でがんばっていただきたい。

質疑応答時も「パワハラモラハラ上司の、育ちや環境を慮る義務はあなたには一切ない(録音録画スクショ一択!)」てな名言が響いたが、社会が女性に気配りや愛嬌みたいな「下ごしらえ」を期待しすぎる様子にも前からむかついていたんだ私は。若い男性のなかには「調整」を女性だけに押しつけるのを心苦しく感じているひとも多い。

彼岸。まだまだ遠くても、目を凝らして背伸びすればみえる向こう岸。2024年をほうほうのていで生きるすべてのひとのために、たどり着ける日が早くくるといいなと思う。